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居間に入ると同時にひとり。そしてもうひとりの後ろに入り込む。 念の使い手でもない2人は簡単に倒れた。あまりにも簡単。 「おそいよ」 思わずつぶやいた。なんでこんな弱いやつらに煩わされなければいけないのか、と。 居間の片隅に向かってイルミはゆっくりと振り向く。 すると、の顔が一度安堵に緩み、それからまた急激にこわばったのが見えた。 なんでさ。 なんでなんで――どうして。 そもそもなんでこんなやつらがやってきた? (家以外のひとつのところに留まりすぎた) なんで留まり続けた? (・・・、を拾って修行つけてたから) なんで殺さなかった? (別に・・・殺す理由もなかったから、だから) なんで、放っておかなかった? 見捨てておかなかった? (なんで、なんでって・・・) 「―――知らないよ、そんなの」 いつもならどうでもいいと思えることが、解らない。どうでもいいと、思えない。 そのことに、今の状況すべてにイルミはいらだって、最後のひとりに向けて針を構える。 ソファーのそばに立つ黒ずくめの男。 唯一の念能力者らしきリーダー格の男は、仲間の死にもイルミの突然の登場にもうろたえることなく、ただの首に突きつけたナイフを持つ手に力を入れた。 「・・・っ」 が小さくひきつった声を漏らす。 その声を合図にするかのように、イルミは針を投げた。 男はもう片方の手に持ったナイフで針を弾きながらそのままの勢いを殺さずに攻撃に転じようとした。 しかし。 「言ったでしょ、おそいって」 戦いに身をおくものにとって、それはとても簡単な手。だからこそ男は気付けなかった。 針を投げると同時に動き出していたイルミの爪が、手が、腕が、男の身体を貫通し。 「・・・は、てめえ、の・・・獲物をおとりに使っ、って・・・わけか」 そのまま、横に薙いだ。 「・・・、?」 濃厚な血の臭いがイルミを包む。 返り血を避けるだけの心の余裕もないことにイルミは気付きもせず、縛られたままのの元に駆け寄り、強化したままの爪で縄を一息に切り取った。 次に猿轡も取ろうとして、さすがにこれは結び目を解こうとの顔の横まで手を持ち上げる。 その、血に赤く染まった手がの髪に触れようとした瞬間。 「・・・・・・こわい?」 の肩が小刻みに震えだした。 「あ、ぅあ」 「、ごめんね」 時間がないから、ちょっとだけ我慢して。 イルミは一言つぶやくと猿轡を取り去り、触れるか触れないかの境目で、そっとの冷たい身体を包み込んだ。 そしての首筋に。 「ごめん」 再度の謝罪の言葉と同時に、手刀を入れた。 倒れ掛かったの身体を支え、ソファーに横たえなおす。 力を失って沈み込む小さな身体を前に、イルミは小さくため息をついた。 (失敗した) 刺客に居場所が漏れたことも。 をひとりにしたことも。 ―――自分が人を殺す、その瞬間を見られたことも。すべて。 「・・・どうしよ」 思わず幼子に戻ったかのように不安を声に出してしまう。 最後のひとりに向き合う直前。 が見せた表情が忘れられなくて、どうにも気になって。 むしゃくしゃして。 力も感情も、全然コントロールすることができなかった。 未熟な自分を叱咤する。 しかし今は反省に時間を費やしているばかりではいけない。イルミは一瞬瞑目すると、気持ちを切り替えた。 そしての身体に慎重に針を差し込み始めた。 慎重に、確実に。 開いてしまった精孔を、閉じるために。 いきなり急展開? 話より、イルミの性格が・・・ってことですが。 先にヒロイン好きになるのはイルミですが、自覚するのはヒロインが先です。 イルミ惚れる→ヒロイン惚れる→ヒロイン自覚→イルミ自覚 ここまでいって、やっとですね。先は長いなー。 |