先日拾った同居人が昼間の特訓で疲れ果てて眠る夜半。
イルミ・ゾルディックは走って1時間もしない街に降りてきていた。

暗い路地裏の隅にコッソリと浮かび上がる白い蜘蛛。イルミの叔父が営むカクテルバー『White Spider』だ。





「いらっしゃいま・・・って、イルミ。ひさしぶりだね」
「うん、ひさしぶり」

カウンターの中からバーテンダーであり店主でもあるアルファがイルミに声をかけた。
青白く光る店内は狭く10人も入ればいっぱいになってしまうような店だ。しかし根強く通う常連が多く、目立たない場所にしては店はそこそこの売り上げを上げている。今日も3・4人の客がカウンター席で色とりどりのカクテルを楽しんでいた。
イルミは慣れたように店内を進み、奥から2番目の席についた。

「アルファ、なんかオススメの頂戴」
「そうだな・・・まずはフロリダでいいかな? いいオレンジが入ったんだ」
「いいよ」

手早く材料を用意してシェイカーを振る。

「はい、お待たせ」

カクテルグラスに満たされた鮮やかな黄色い液体から絞りたてのオレンジの香りがする。
イルミは少し乱暴にグラスを取り上げると、一気に半分ほどあおった。

「・・・・・・・・・アルファ」
「何?」
「これアルコールはいってないじゃん」
「うん」

少し責めるような甥の顔を横目に、アルファはそ知らぬ顔でグラスを磨き始めた。

「今は――酒におぼれるようなときじゃないだろうかなって」

まぁ、兄さん譲りでイルミが簡単に酔っ払うわけないけど。
アルファがそう呟くと、イルミは残りをゆっくりと空けて、どちらを肯定したのかそれとも両方か、自分でも分からないまま、そうかもねと呟き返した。










家に帰り着いて気が付いたのは少しだけだけれども確かな異変。
キッチンとダイニングに煌々と灯る明かりと、中には複数の気配。の気配も感じる。

「つかまったかな、

イルミは思わず断定の口調でこぼした。
家の中に一歩足を踏み入れる。

これは罠。
罠だと分かっている。

(――解っているけど)

かまわず足を進める。
風を切る音。軽く首をかしげる。

「なんでだろうね、ホント」

イルミはただ軽く手を振るだけ、それだけで背後の気配は絶たれた。
まずはひとり。

「邪魔なんだから、見捨てたっていいのに」




















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最後のほう、2行1行の繰り返し。見栄え悪っ。変換少なっ。

フロリダってカクテルは2種類あるみたいです確か。
オレンジジュースを中心にレモンジュースとか混ぜたノンアルコールのと、同じくオレンジジュースを使ったジンベースの。
ここに出てくるのは前者のつもりです。