「えっとね、このへん」

地図の上を滑る指もきれいですねお兄さん。
あまりの衝撃に、思わずわたしは関係のないことを口にしてしまった。
つまりは、それだけの衝撃だったってこと。





「なんなんですか・・・この地図」

パーミア高原とやらの場所を教えてもらおうと、わたしはずうずうしくもお宅にお邪魔させてもらい、地図帳を出してもらった。
お兄さんは身も知らぬわたしをあっさり自宅に入れてくれたし、地図帳自体はこれまたあっさりと出てきた。
問題はその地図帳自体。

わたしが思わず呟いたら、「だから世界地図だってば」と返された。
それはそうだろう、世界地図を見せてくれるように頼んだのだから。
たしかにお兄さんが差し出してくれたそれは地図だった。
もちろんわたしが知ってる大陸がいくつもある。
これでも地歴は得意です、えへん。
字らしき記号は読めなかったが、それぐらいなら分かる。

けど、けどけどけど。
思わず地図を持つ手が震える。

「・・・どう組み合わせてもパンゲア大陸にならなそうな配置なんですが」
「なにそれ」

これ夢ですか。
そう自分自身に問いかけながら自分のほほをつねってみた。

・・・・・・・・・ぃひゃい。





ぶっちゃけ結論といきましょう。腹はくくりました!

「わたしはどうやら異世界にいるようですね」

もしくはタイムスリップ。

「なにそれ。冗談?」
「お兄さんは『なにそれ』が口癖なんですか」
が言わせてるんだよ」

いろいろと痛いことを言いながらも、青年はわたしの話を聞いてくれた。

地球、日本、関東地方。
家族構成にわたし個人の生い立ち。
国際関係に社会構成に一般的な日常生活。
とりあえずできるだけ主張はしてみる。
ここは自分の世界ではない。

すべてがよく分からないこの世界。言葉は通じることに感謝を捧げようじゃありませんか。





「どうしよっか」

わたしが今のところ話せることは話し終えて生じた沈黙を、こののんきな一言が打ち破った。
なんか「次の休み、どこかに遊びにいく?」と兄さんとか姉さんが言ったような、それほどの気楽な台詞に、わたしはどうも彼の指す意味を上手くつかめなかった。

「・・・どう、とは?」
「ん? そのまんま」

彼は少し小首をかしげながらこっちをじっと見つめてきた。同時に長いつややかな黒髪がさらりと揺れる。
その動作は彼の年齢からするとひどく幼いような気もするが、なぜか妙に似合ってる。
なんか、かわいいかも。
漠然とそう思った。

「つまりさ、って身寄りないんだろ?」

ついうっかり見惚れて黙り込んでしまったのに焦れたのか、彼は言葉をつなげる。
わたしは慌ててうなづいた。

そう、身寄りがない。
頼るべき知り合いもいない。
それどころか、異世界(推定)なのだから当たり前のこととして、戸籍すらない。
つまり、生きていく術はほぼないといえる。
そんな自分がこれからどうやって生きていけばいいのか。
青年の言葉を受けて、わたしはは今更になっていくつもの問題に気付いた。
マジでやばくないですか、わたし。享年18歳?

と、そこまで考えて。

「え? ってことはなんですか。信じてくれたんですか、わたしの話」
「うそだったの? なら殺すけど」

あっさりと物騒な台詞を言わないでほしい。
再び針を構えられ、わたしはものすごい勢いで首を振った。
もちろんのこと横に、である。




















BACK/NEXT

イルミの名前を出せないと、結構つらいですね。